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職場における
メンタルヘルス維持のための
対策は?

近年、長時間労働による心身への悪影響は、深刻な問題となっています。労働時間の増加に伴い疲労回復が不十分になると、脳・心臓疾患の発症を招く一方、精神にも不調をきたし、健康的な生活を送ることが困難になってくるのです。このような事態を避けるために、職場ではどのような対策がなされているのでしょうか。

1. 長時間労働のメンタルヘルスへの影響はどんなもの?
労働が長時間にわたると、疲労回復の時間が削減されるため、身体ばかりではなく心の健康、いわゆるメンタルヘルスを損なうリスクが高まります。実際、長時間労働と脳・心臓疾患の発症との間には医学的に因果関係が認められており、その一方でメンタルヘルスの悪化も高い関連性があるものとして報告されています。
では、メンタルヘルスの悪化が仕事に及ぼす影響とはどのようなものでしょうか。
まず、仕事に対する意欲がなくなり、集中力や判断力が落ちて、仕事の効率が低下します。ひどくなると、朝起きられない、出勤できないといった症状が現れ、休職や離職につながったりするのです。そして、最悪の場合は、うつ病を発症し死においこまれることさえあります。
また、注意力がなくって、機器の操作や運転を誤るなど安全を確保できなくほか、約束を忘れる、仕事内容を間違えるなど様々なトラブルがひきおこされます。

2. メンタルヘルス対策のために国が取り組んでいること
このようにメンタルヘルスに被害を及ぼす長時間労働の是正について、国では「過重労働による健康障害防止のための総合政策」をもとに、労働者の健康管理を推進し、過労死を防止するための多面的な法整備を進めています。
そして、「心の健康づくり計画」に基づき、事業者は心の健康問題の特性を考慮しながら、労働者の健康を含む個人情報を守り、意志を尊重して、労働者の心の健康を保つための措置を実施することを指針としているのです。具体的には、ストレスチェック制度の活用や職場環境の改善などを通じてメンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防、メンタルヘルス不調を早期発見し適切な措置を行う二次予防、メンタルヘルス不調に陥った労働者の職場復帰のための支援を行う三次予防に取り組むよう推進しています。
また、厚生労働省は「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」の中で、事業主が行うべき「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフによるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアを提唱しているのです。

3. 職場で行われるべきメンタルヘルス対策
国の制度以外に、それぞれの企業でメンタルヘルス対策を行うことも重要です。
ストレスの一番の原因は人間関係によるものであり、ストレスを減らすのには人間関係の改善が最も有効といえます。特に管理者が円滑なコミュニケーションを心掛けていると、職場の風通しがよくなり、メンタルヘルスの悪化防止が可能になるでしょう。メンタルヘルスケアの重要性についての意識を高めるために研修や情報提供を行うことは、一見悠長な対応に見えますが、実は生産性向上のための近道なのです。
また、気軽に相談できるカウンセラーや産業医の配置も効果があり、まだ心身の不調が軽いうちに相談することで、さらなる悪化を予防することができます。
そして、何より企業は過酷な労働を強いらないよう労働環境を整え、労働者に不調のサインが見えたら、迅速に対応することが重要なのです。

そもそも、働くことで労働者が心身の健康を損なうような事態は、許されないものです。しかし、現実には、長時間労働が常態化している企業をなくすこと容易ではないでしょう。ですが、理不尽な仕事については、誰かに相談したり、「これ以上はできません。」と伝える勇気も必要であり、そのような声を吸い上げる土壌作りをすることが企業に求められる最善の策ではないでしょうか。